伊達男の映画批評

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アン・ハサウェイがエロいだけじゃない「ラブ&ドラッグ」レビュー


映画『ラブ&ドラッグ』予告編

作品・出演者情報

監督

エドワード・ズウィック

キャスト

個人的レビュー

アン・ハサウェイが美しい裸体を魅せる映画、、、ということで興味本位で鑑賞したが、エロを求めて鑑賞するだけじゃ申し訳なくなるほどいい内容だった。

上司の妻と店のバックヤードでセックスをしたのがばれて仕事をクビになったジェイミーは、医薬品大手のファイザー製薬で営業マンの職を得る。天性のモテ男であるジェイミーは大病院を中心に営業を仕掛けていく。しかし、ライバル会社のトップセールスがいるためになかなか結果を出すことができない。

そんな時、若年性パーキンソン病を患うマギーと出会ったジェイミーは、その美しさに惹かれる。まあ、医者でもないのに乳を見てしまい、駐車場で怒られるところから始まるのだが。

そこから、ジェイミーとマギーの交際が始まる。紆余曲折を経て、お互いの理解を深めていくストーリーだ。

驚くことに、この映画は実話ベースの物語だ。バイアグラの営業マンであるジェイミー・レイディが書いた「全米セールスNo.1に輝いた〈バイアグラ〉セールスマン」が原作。とはいえ、マギーは映画の中だけの登場人物である。

この映画はコメディとラブストーリーを織り交ぜた傑作だ。いわゆるラブコメというジャンルだが、コメディ部分が実話で恋愛部分がフィクションというのは面白い。

ジェイミーを演じるジェイク・ギレンホールとマギーを演じるアン・ハサウェイは、「ブロークバック・マウンテン」という作品でも夫婦役で共演経験がある。こちらの作品では夫婦が主題ではなかったためそこまで目立っていなかったが、今作は違った。パーキンソン病という難病と闘う女性との恋愛がテーマでもあるため、アン・ハサウェイがとても目立っている。

本作は非常に難しいテーマを、コメディを通して観る者に訴えかけている。恋人の関係になってしまえば迷惑をかけてしまうことを知っているマギーは、身体だけの関係しか許さない。それとは反対に、いつしかマギーという人を愛するようになっていたジェイミー。

終盤までずっと、恋愛関係についてはマギーが消極的でジェイミーが積極的という構図だった。しかし、二人で一緒にシカゴに行き、彼らの思いは逆転する。ジェイミーはパーキンソン病の妻を持つ男性に「やめておけ」と言われ、思い悩む。一方でマギーはパーキンソン病患者の集いに参加し、病気で思い悩んでいるのは自分だけじゃないというポジティブな気持ちになる。

このすれ違いは、観ていて辛いものがあった。ジェイミーはマギーの病気を治して一緒にいることを求め、マギーはありのままの自分でいいという気持ちになっている。どちらの思いも同じ方向を向いているのに、すれ違ってしまう。

なんだか、ラ・ラ・ランドの展開に似ているなと思った。夢を追っているのは同じだし二人とも間違ったことは言っていないのに、その過程ですれ違ってしまう。このムズムズ感が、感情を激しく揺さぶってくる。ジェイクとアンの演技も上手すぎて、「ああ、どうしてこんなにもすれ違うんだ!思っていることは同じなのに!!」と叫びたくなる。

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難病と向き合うのは、勇気がいることだ。特に、関わる人に否応なしに迷惑をかけてしまう病気だと恋愛には奥手になってしまう。それも分かったうえで真剣に向き合ったジェイミーは素晴らしい。

すごく大事なテーマを扱っている映画だが、ラブコメの皮を被っているため、基本的には笑いながら見ることができる。バイアグラのヒットはこうして生まれたのかと勉強にもなるので、機会があれば是非観てほしい。

もちろん、アン・ハサウェイ目当てで見てもOKだ。徐々に作品に引き込まれていき、気づけば作品の主題に触れていろいろなことを考えるはずだ。

良かった点

良かった点は、ラブコメの中にヒューマンドラマの芯が通った作品であるところ。これがただのラブコメ作品でも楽しめたかもしれないが、おそらく飽きてしまっていただろう。重たいテーマをラブコメと並行して扱った本作は、個人的には革新的な作品だと思った。

残念だった点

終盤のパジャマパーティーはジェイミーのキャラがブレてしまうような気がして少し疑問だった。軽い男がマギーと向き合う中で変わっていくというのもシナリオだと思っていたが、パジャマパーティーはその流れと逆行している気がした。

終わりに

特に男性には見てほしい作品だと思った。アン・ハサウェイが最高なのはもちろんなのだが、人との付き合い方や覚悟の仕方、何を大切にして生きるべきかなど、鑑賞した後に色々と考えることの多い作品だったと思う。