伊達男の映画批評

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虫が嫌いなら見ないほうがいい「メン・イン・ブラック」レビュー


Men in Black (1997) Official Trailer 1 - Will Smith Movie

作品・出演者情報

監督

バリー・ソネンフェルド

キャスト

個人的レビュー

銀河系の存亡をかけて、地球にやってきた宇宙人と戦う典型的SFストーリー。

全体を通して起承転結が分かりやすく、子供でも楽しめる映画だったのではないだろうか。

まあ、地球人VS宇宙人の構図であることは容易に想像がつくのだが、作中に出てくるほとんどの宇宙人は地球人と共存しているため、そこは少し分かりにくかったかもしれない。

今まで地球にいた宇宙人と、宇宙船でやってきた銀河を奪いに来た宇宙人は少し違う。宇宙からやってきて、牧場を営むエドガーの体を奪った宇宙人は、いわば宇宙人の中の犯罪者的存在だ。

猫の首輪についていた銀河を奪わんとして、暴れ回る。

ちなみに、このエドガー役の役者さん(ヴィンセント・ドノフリオ)は超名作映画「フルメタルジャケット」のデブ役をやっている。人の皮を被った宇宙人役だから、特殊メイクも入っていてわかりにくいかもしれない。でも、フルメタルジャケットでシゴかれまくってたアイツであることは間違いない。こういう発見もやっぱりちょっと嬉しいよね。

さて、この映画の主人公はトミー・リー・ジョーンズ演じるKという男と、ウィル・スミス演じるJという男の二人組だ。

寡黙で多くを語らないKと、陽気でなんでも首を突っ込もうとするJの対照的なコンビで宇宙人を倒していく。

これも蛇足だが、ジョーンズはジョージアのCMでは宇宙人を演じている。地球人として宇宙人と戦ったり、宇宙人として地球の不思議を悟ったり、大変そうである。ただ、ジョーンズは寡黙な地球人であり、宇宙人でもある。冷静沈着な役柄がとても似合う役者だと思う。

ウィル・スミスはコメディヒーローが非常に得意なイメージがある。いろいろな作品で主役を張っているが、演技力はやはり一級品。海外版ワンピースをやる場合は、ルフィ役が適任だと思う。

本作品は無駄な描写が極めて少ない。どのシーンも必要不可欠だ。いかにして地球人と宇宙人が共存しているのか、MIBとはなんなのか、なぜエドガーを乗っ取った宇宙人は人間を嫌っているのかなど、曖昧にせずに描いていると感じた。Jが任務を通して責任感を強めていく変化も極めて分かりやすく描かれているので、中学生くらいでも話の内容をしっかりと理解できたのではないだろうか。

唯一いらないなと思ったのは、冒頭シーン。亡命者の中で、一人だけ宇宙人なのを見破って始末するのだが、あのシーンはもう少し短くできた気がする。あのシーンで伝えたかったことは、Kの相棒が加齢によって衰えていること、新しいパートナーが必要になることの示唆だと思うので、もう少しコンパクトに終わらせても良かった。

その分、バグが乗った宇宙船がなぜ地球に来たのかを描けば、その後の展開がより分かりやすくなっただろう。

1997年の作品ということもあり、CGについては荒い部分もある。とはいえ、使いどころはSFにしては多すぎずで、リアリティをあまり削ぐことなく描かれていたと思う。

また、パソコンがめっちゃ古い。2020年現在に描かれる近未来の様子とはかなり違うが、当時のハイテク技術がどんなレベルだったのかが分かる。これも、昔の名作を見る楽しみといえるだろう。そう考えると、20年後の映画ってどんな描かれ方をしているんだろうか。気になる。

SF作品とあって、男心をくすぐるガジェットがいくつか登場していたのも良かった。最初にJが渡されたミニ銃とか、あのサイズで威力半端なくてちょっと欲しくなった。護身用にちょうどいい気がするんだよね。あとはトンネルの天井に張り付いて走れるMIBの車。あれあったら渋滞に巻き込まれずに済むんだろうなと思いつつ、首都高のトンネルって標識多いから事故って終わりだなーとも思う。でも、そのうち開発されそう。

まあ正直、典型的なアメリカのSF作品という感じなので好みは分かれるかもしれない。想像を超えるシナリオはないし、結末もそりゃそうだよねと納得する形で教科書のように綺麗に終わる。

シナリオ的に、「地球人が地球を守る」という観点からしか描かれていないために薄く感じるのだろう。宇宙人側がなぜ地球を攻めてくるのか、その目的の先に何があるのかを作品にもっと落とし込んでもらえたら一味違った作品になったのかな。

とはいえ、もはや1997年の作品は現代のSF映画を作る際の最低ラインとして置かれているだろうし、シナリオが物足りなく感じるのは現代のSF作品が確実に進化しているという証なのかもしれない。

退屈しない映画は他にもたくさんあるけれど、本作は単純明快なシナリオで観る者を飽きさせないバランスの良い作品だったと思う。

良かった点

個人的には、ウィル・スミスの演技がとても良かったと思う。おちゃらけているけど、徐々に責任感を持って任務に当たるようになり、最終的にKから認められる。こう書けば簡単そうな演技に見えるかもしれないが、そのグラデーションが非常にうまい。ある時を境に変わるのではなく、Kの背中を見て徐々に考えが変わっていく様子を、視線や所作で視聴者に植え付けていくのはなかなか難しいところだ。それを違和感なくできるからこそ、ウィル・スミスは一流のハリウッドスターなのだろう。

あと個人的に好きだったのは、ローゼンバーグ(貴金属店の店主)中に入っているエイリアンが小さかったところ。人体の顔面部分がコックピッドになっていて、小さい体で大きな人間の体を操縦しているのが良かった。めちゃくちゃ既視感あるなと思っていたけど、戦隊モノの巨大マシンだった。小さい頃に見て憧れてた記憶が一気に蘇ってきて最高だった。

残念だった点

残念だった点は、虫の描写がリアルすぎた。特に今回の敵キャラのバグはゴキブリがモチーフになっている(正確には不明)っぽく、めちゃくちゃゴキブリが出てくる。正直、虫嫌いの私にとってはどんなホラー映画よりも恐怖だ。鳥肌が立ちっぱなしで、映画を見終わってからも部屋にゴキブリが沸いてそうで気持ち悪かった。あと、エイリアンを倒したときのドロドロも生理的にキツい。そんなリアルにしなくてもいいのにと思ってしまった。

個人的には、二郎系っぽく「ゴキブリ抜き、ドロドロ抜き、ピカッ多め」のコールをしたいところだ。そういう機能が開発されるといいな。

終わりに

メン・イン・ブラックは配役もよく、いい意味でSFコメディ作品の教科書的な存在だと思う。SFの歴史を感じるためにも、早いうちにこの作品を見ておくことをオススメする。

虫が嫌いな人は無理しなくていいです。