ブラッド・ピットがかっこいい!「ファイト・クラブ」 レビュー
作品・出演者情報
監督
キャスト
- ナレーター(主人公・「僕」) - エドワード・ノートン
- タイラー・ダーデン - ブラッド・ピット
- マーラ・シンガー - ヘレナ・ボナム=カーター
個人的レビュー
ブラッド・ピット出演作品で非常に有名なのがこのFIGHT CLUBだが、今回初めて鑑賞した。
結論、世間に対して鬱屈な気分を持っている人が見ると、明日からの生活が一変するほどのパワーを持っている作品だと感じた。
この作品は初見では展開についていけないかもしれない。というのも、主人公とタイラー・ダーデンは別の人物であると思って見ていると、中盤以降で混乱するから。
注意深く作品を見ていれば、「そういえば、この主人公の名前ってなんだ?」と気づくことができる。仕事をしている場面でも名前は出てこないのだ。しかし、物語の構成上は「さえないサラリーマン」であり、自助グループやや列車のシーンなど匿名でも差し支えないような空間にいることが多い。主人公の名前が気にならないのだ。
この映画の中でよく語られるのが、物質的な豊かさと精神的な豊かさの対比だ。それは、主人公とタイラー・ダーデンの対比といってもいい。
主人公は普通のサラリーマンだが、居住空間を雑誌に出てくるような完璧な空間にするために消費していた。物質的には何も不自由しない、周囲から羨望の眼差しを向けられるような生活だ。だが、精神的には安定せず、不眠症を抱えていた。
一方でタイラー・ダーデンは、物質的な豊かさを完全に捨て、自分が思うように、正直に生きる人間だった。ボロボロの家に住み、適当な服を着ている。だが、彼には精神的な豊かさがあった。それは、実は現代社会で生きる人が本当に欲しているものなのかもしれない。
一人の人間として、一人の男としてどう生きるべきか。この作品は常にこの問いを投げかけてくる。
広告に踊らされていらないものを買い集めるのが本当にやりたいことなのか?そんなことのために、人生の限られた時間を使って金を稼いで消費していていいのか?もっと自分に正直に、生きたいように生きろ。今ここで死んでも後悔しないような生き方をしろ。
そんな強いメッセージが込められている。
上述の「どう生きるべきか」の問いに関して、かなり強いメッセージを送っているシーンがある。
コンビニの店長に銃を突きつけ、本当にやりたいことを聞くシーンだ。
「獣医になりたい」といって怯える店長に対し、タイラーは「6週間後に獣医になるための勉強をしていなかったらぶっ殺す!」と言って逃す。その乱暴な行動に対して主人公はタイラーを咎めるが、「アイツは明日、人生最高の朝を迎えるはずだ」と自分の行いを正当化する。
このシーンは私の心に一番深く突き刺さった。やりたいことをやらない人生で、死ぬ間際に後悔しないのか?今の自分はやりたいことができているのか?そんな問答を心の中で繰り返している。時間を無駄にしちゃいけないな、やりたいこと、実現したいことに向かってまっすぐ進まなくてはと思わせてくれるシーンだった。
もしかしたら、このシーンを見ても何も感じない人もいるのかもしれない。精神的な豊かさを手に入れている人であれば、たぶん心は動かないだろう。やりたくない仕事をやっているひと、何かと理由をつけてやりたいことができていない人には突き刺さるシーンだと思う。
誰しもが心の中ではタイラー・ダーデンと同棲しているはずなのだ。自分の理想とする姿を具現化した人物が必ずいるはずだ。お前の心の中のタイラーは、今のお前に満足してるか?その生き方は、タイラーに銃を突きつけられたときに胸張って誇れるか?
FIGHT CLUBを鑑賞した後、そんなことをずっと考えてしまう人が多いんじゃなかろうか。
FIGHT CLUBでは名言がいくつも飛び出している。特に、Amazon Primeで視聴していると皮肉まじりにも聞こえてきて面白い。
良かった点
この映画の良かった点は多すぎて挙げきれない。なので、演出上面白かった部分を中心に書いていく。
まず、この映画の特徴はサブリミナルが非常によく使用されていることだ。
序盤、まだ主人公とタイラーが出会っていない時、不意にタイラーの姿が数コマだけ挿入されている。あくまでも考察だが、サブリミナル的にタイラーが出ることで
- 主人公とタイラーが同一人物であること
- 主人公が心の中でやってみたいと思っていること
が表現されているのではないだろうか。
このサブリミナルに気づいていると、作品の見方も少し変わってくるかもしれない。
また、作品中では至るところで主人公とタイラーが同一人物であるというヒントを与える描写がある。
- 冒頭の「タイラーの言葉だから確かだ」と言って爆破までの時間が2分だとわかるシーン
- 主人公の名前が「正式には」出てこず、マーラになんて呼べばいい?と聞かれるシーン
- 映画のフィルム交換のタイミングを伝えるシーン
- 石鹸を製造している時に少し変えれば爆薬が作れるというシーン
- タイラーと同じカバンを使っているシーン
- マーラの反応の全て
- 他者と会話する時は必ず主人公かタイラーどちらかしか会話に参加していない
ざっと思いつくだけ書いてもこのくらいある。
これだけのヒントをもらっていても、終盤までタイラーと主人公が同一人物だということは分からないものなのだ。それが面白い。
見終わった後、すぐにもう一度見たくなる作品だ。
残念だった点
特に残念に思った点はないが、後半にかけて宗教チックな描写が多くなってしまったのが少し残念だった。タイラーは「本当になりたい姿」を反映させた人間なのだから、もっと別の意味でカリスマ性を発揮してくれたら、、と思った。
まあ、こういった感性は宗教家が起こした大事件の歴史を想起してしまう日本人特有のものなのかもしれない。仕方ないね。これは。
終わりに
ミスチルの歌詞に出てくるなあくらいにしか思ってなかったこの作品だが、実際に見てみると感情が激しく突き動かされた。
やりたいことをやって生きよう。そう思えた。
何気なく見たけど、やっぱり人は必要な時に必要な作品に出会うんだな。
自分の気持ちに正直に生きられるように頑張ろう。